「ただいまー」

「よーし…、そこに座れ」

「は?」

「いーから、座れ」

「は、はい…」

カタン…と目の前の椅子に座ったの前に、用意しておいたとっておきの紅茶を注ぐ。

「…今から茶に付き合え」

「わぁ…凄い、いい香り」

「今日は特別、だからな」

「特別?」

ポットを机の上に置いてから、冷蔵庫へいれておいた物を取りに行く。
ずっと食わないで我慢しておいた甲斐が、ありゃいいんだが…な。

「…何本だ」

「………」

丸いケーキについてたろうそくの袋を破きながら尋ねるが、こいつは口をぽかんと開けたまま。

「帽子屋さん…こ…」

「ケーキだ」

みなまで尋ねられる前に、自分の声で遮る。
確認されっと、俺が、お前なんかの誕生日を祝おうなんて前から考えてた馬鹿な男みたいにみえるだろう。
返事がないのをいい事に、6本あったぶっといロウソクを全てケーキに立て、持っていたライターで火をつける。

「いいか、俺が火をつけて、座ったら、すぐ消せ。あっという間に消せ

「はっ、はいっ!!」

1本…また1本…つけていけば、間抜け顔だった目の前の女の表情が柔らかな喜びの表情へと変わっていく。

「…おい」

最後の1本へ火をつける前に、ぽんっと頭を撫でてやる。

「ロウソクを吹き消す時の願いは、考えてるだろうな」

「………うん!!」

「上等」

満面の笑みで頷いたのを確認してから、最後の1本へ火をつけると席に座る。

「ありがとう、帽子屋さん」

「礼なんざいいからとっとと消せ。ケーキにロウが垂れちまう」

「はい」



大きく息を吸って、ロウソクを吹き消す瞬間…
僅かに唇を動かして、祝いの言葉を告げる






Happy Birthday…





BACK



今年の誕生日で、初めてAre you Alice?のキャラのほぼ全員を使って書いた
一応、連続する話……です。
UPするために、コメントとタイトルを考え直しました。

働いたら負けだと思っている帽子屋さんですが、さり気ない演出は上手い気がするんですよ。
だってほら、ダメ人間でも大人だし、スマートにやってくれるんじゃ……ない、かなぁ。

…という希望をめいっぱい込めてみました。

なので、アリスさんがビックリしちゃいそうなぐらい、普通に祝って頂きました。
あの声で囁かれれば一発でノックアウトです…中身の人込みで(笑)